自粛が長引いて物欲も停滞気味だったのですが、久々にビビッと来て復活しました。
ル・ボナーさんの細マチダレスですが、今回はちょっとスペシャルバージョンでして、欲しい!という欲望とオーダーメイドのダレスがあるのに使用頻度の低い鞄を更に買うのか?という理性が激しく争ったのですが、結局、欲望が勝ちました。理性は30分も頑張った。
ハンドルは革を重ねた形。実はうちではこの形は初めてだったり。
ル・ボナーさんの細マチダレス、特徴としてまずは軽さが挙げられます。ダレスは基本的に重いのですが、少しでも軽くするため口枠にアルミ製を使っています。ただ、アルミだと丈夫さとかミシンが使えないとかあって、ここは松本さんが手縫いしています。その分、ダレスは高くなると仰っていますが、世間一般の価格からすると全然安いんですよね。
ベロと本体の結合部分も。
ベロには画像のような穴があって
錠前で挟み込むタイプになっています。
ダレスバッグは大き目の錠前がドーンとあってデザイン的なバランスが取れるのですが、このダレスの錠前は小ぶりで上の方に付いているため、ボディーがちょっとシンプル。そのためサイドに肉盛りがされて良い塩梅に。
ところでこの細ダレス、一見、直線的でカッコいい印象ですが、細かく見ると微妙に膨らみがあり、それがル・ボナーさんらしい柔らかさを出してます。
細マチダレスは、2マチになっています。
中は敷居が1つ。ピッグシルキー(ピッグスエード)が美しいです。
シンプルに片マチのファスナーポケットが1つだけ。
錠前の鍵。ほぼ100%使われることのない、見た目のカッコよさのために吊るされています。
ダレスバッグの鍵を紹介している記事を見たことが無い気がします。M&Kというのが錠前を作ったメーカーでしょうか。(追記)こっちは市販の鍵な気がしてきた。
という訳で、細マチダレスだったのですが、スペシャルバージョンというのが購入の動機だったはず。どの辺がスペシャルだったのでしょうか?
答えは錠前。これがいつものと違っていたのでした。
ちょいと話が脱線しますが、ル・ボナーさんの細マチダレスって元々は一般的なダレスと同じような錠前でした。四角いタイプでもう少し真ん中くらいの位置に。
今使っている錠前はグラスというフラップタイプのブリーフケース用に作ったオリジナルの錠前なんですよね。
ル・ボナーさんのお客さんに精密金属加工の社長さんがいて、鞄の出来は素晴らしいが金具に不満があるという話をされ、だったら作ってみますか?みたいな流れで始まったのが2007年頃。
真鍮の削り出しなのですが、日本の企業が採算度外視で作っているので、鞄用の錠前としてはあり得ない精度の代物に。それもそのはず、削り出しと言っても普通はある程度鋳造してからなのですが、これは真鍮の塊から。
ここまでが通常の細マチダレスの錠前。まぁ、これだけで十分凄いんですが。
K社長がスーパークロムメッキの錠前持ってやって来た - ル・ボナー
今回使われたのは、スーパークロムメッキとロジウムメッキされ、ロゴとシリアル番号が刻印されているバージョン。スーパークロムメッキは世間一般的なそれとは違って、ル・ボナーさんの造語。銅とニッケルとクロムによる三重メッキ。ロジウムメッキは通常、宝飾品とかにするもので間違っても鞄の錠前にするようなものではないです。2007年当時でも呆れるようなものでしたが、今やロジウムの価格は数倍に跳ね上がっており、今だったら酔狂でもやらないんじゃないかと。
これが私の錠前。ロジウムのシリアル番号06。表面は削り出しと分かるように敢えて跡が残されています。また、ロゴとシリアル番号が刻印されていますが、レーザー刻印ではありません。0.1mmのドリルで3時間掛けて掘ったそうで、この錠前だけで鞄が買える価格になるんじゃないかと戦慄しております。
こんな錠前が使われているのに価格が同じだったら、そりゃ買うよね。というのが購入の決め手でした。
錠前プロジェクトは2弾、3弾と続くはずでしたが、どう考えてもコスト度外視過ぎて頓挫。そんな職人たちのロマンの夢の跡を手元に持っておきたかったんですよね。